税務トピックス No.44  贈与にかかる税金

 

贈与税は個人から財産をもらった人が払う税金です。財産を一定以上もっている人が亡くなると相続税がかかります。そこで、財産を生前に相続人に贈与をして、相続人の名義に変えてしまうと、相続財産はなくなり、相続人は相続税を払う必要がなくなります。それでは、相続税の制度が有名無実となり、また、生前贈与を行った人と行わない人との間に、税負担の著しい不公平が生ずることになります。

このような相続税逃れの抜け道を防ぐために贈与税の制度が設けられ、贈与を受けた場合にも、税金を支払うこととし、課税上の不公平が生じないようにしたわけです。このため、贈与税は相続税の補完税であるといわれ、税負担も相続税より重くなっています。

  1. 贈与税の納税義務者

贈与税は個人から財産をもらった場合に、もらった人にかかる税金です。

2.贈与税のかからない財産

ただし、次の財産の贈与なら贈与税はかかりません。

・扶養義務者から贈与を受けた教育費や生活費で妥当な範囲内の額

・宗教・慈善・学術などの公益事業を行う人が贈与により取得した公共事業用財産

 る権利

・特定の公益信託から交付される学資金など

 したものでないとダメ)

・香典・花輪代、年末年始の贈答、祝物、見舞いなどのための金品で社会的に妥当なもの

 れません)

注)ただし、この場合、被相続人が配偶者で、生前、贈与されたのが居住用不動産であるときは、

一定の要件のもとで2,000万円の部分について、相続税もかかりません。

 る贈与税の配偶者控除)

・一定の要件のもとで子や孫が贈与を受けた住宅取得資金のうち、300万円までの部分(いわゆる

住宅取得資金贈与の特例)

3.贈与税の計算方法

贈与税の計算は次のように行います。

【贈与税の速算表】

基礎控除および配偶者控除後の課税価格

税率

控除額

基礎控除および配偶者控除後の課税価格

税率

控除額

万円以下

150

200

250

350

450

600

800

10

15

20

25

30

35

40

75,000

175,000

300,000

475,000

700,000

1,000,000

万円以下

1,000

1,500

2,500

4,000

10,000

10,000 万円超

45

50

55

60

65

70

1,400,000

1,900,000

2,650,000

3,900,000

5,900,000

10,900,000

 

贈与税の申告は

その年に基礎控除の60万円を超える財産の贈与を受けたときには、その贈与を受けた年の翌年

21日から315日の間に住所地の税務署に対して贈与税の申告書を提出してその税額を納

付しなければなりません。

注) 贈与税にも、相続税と同様延納(年賦の分割払い)が認められています。贈与税の場合最長5

です。

 

 

 

4.特殊な贈与

1)負担付贈与

例えば親が子に借金(住宅ローンの残債務)をつけて居宅を贈与するなどの場合。

受贈者に債務を負担させて財産の贈与を行うことから、このような贈与を負担付贈与といいます。

 

負担付き贈与の場合、贈与を受けた財産から負担すべき債務の額を差し引いて残った分だけ贈与があったものとして取り扱われることになっています。

  この贈与を受けた財産の価格をいくらにするかは次のようにその財産の種類によって評価のしかたが異なります。 

・贈与を受けたのが土地や家屋の不動産であるとき−−−通常の取引価格となる

・贈与を受けたのが上場株式(又は店頭登録株式など)−−−贈与があった日の終値(又は取引価格)

・贈与を受けたのがこれら以外の財産であるとき−−−通常の相続税評価額による

2)低額譲渡があった場合

その財産の価額より非常に低い価額で譲渡があった場合も贈与となります。

例えば、親が子に時価に比較して非常に低い価額で土地を譲渡した場合などがそれにあたります。

その財産の価額と実際に支払った金額との差額(低額での譲り受けによる利益)について贈与があったものとみて、贈与税がかかります。

注意)その財産の価額に比較して非常に低い金額で譲渡が行われたかどうかは、社会常識の範

囲で判断しますが、個々の取引について、取引の事情、取引当事者間の関係等を総合勘

案して、実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかにより判定することになって

います。

 譲渡された財産の価額(時価)をいくらとするかは、上記の負担付贈与の場合とまったく同じように評価されます。

3)贈与者・譲渡者の側の課税関係

負担付贈与をした贈与者又は低額譲渡をした譲渡者の側では、その負担させた債務の額あるいは実際に受け取った対価の額で財産の譲渡をしたことになりますから、そこからその財産の取得費や譲渡費用などを差し引いて譲渡益がでれば、譲渡所得として所得税・住民税の課税を受けます。 例えば

父は土地を贈与することにより、600万円の債務を負担しなくてもよいことになるのですから、土地を600万円で譲渡し、債務を返済したのと同じ結果になります。

したがって、父は次の長期課税譲渡所得について所得税の申告をする必要があります。

600万円 400万円 100万円 100万円

譲渡収入金額 取得費 特別控除額 長期課税譲渡所得

 

(平成12910日)