税務トピックス No.47
サラリーマンの確定申告――――― 確定申告すると税金のもどる人
確定申告のシーズンになってきました。サラリーマンの場合、給料や賞与を受け取ったときにすでに所得税が源泉徴収されており、会社が毎月納税者に代わり納付しています。また
12月になると、会社が年末調整という形で1年間の税額を精算します。このようにサラリーマンは、税金の納付も精算も会社が全部してくれるので、面倒がなくていいのですが、反面、税金には無頓着になりがちです。そのため、確定申告をすると税金が還付になることを知らなかったために、損をしてしまうケースがあります。具体的に主だったケースを見ていきましょう。
( 1) ローンで住宅を取得した人、または増改築した人 ――――― 住宅ローン控除 |
マイホームをローン(借入金)によって新築または購入、増改築した場合、一定の要件を満たすときは、住宅ローン控除が受けられます。住宅ローン控除は、居住用の住まいを取得したり増改築をするために金融機関などから融資を受けた場合に、その借入金残高に応じて税額から一定額を控除することができるという制度です。
対象となるローンは、返済期間が
10年以上の長期のローンを組んでいる場合で、住宅の取得または増改築のために銀行や住宅金融公庫などから借り入れたものとなります。平成
12年中に居住した場合、控除対象期間は15年間で各年の控除額は次の表のとおりです。
平成 12年中に居住の場合 |
|||
期間 |
1〜6年目 |
7〜 11年目 |
12 年目〜15年目 |
借入金残高に次の割合を 乗じた額 ( 5000万円までの部分) |
1.0 % |
0.75 % |
0.5 % |
サラリーマンの場合、2年目以降は年末調整で控除を受けることができますが1年目は自身で確定申告をして税金の還付を受けることになります。
( 2) 家族全体で医療費が年間10万円を超えた人 ――――― 医療費控除 |
医療費控除は年末調整の対象にはならないので、領収書や支払いのメモなどを添えて確定申告をすることが必要になります。
医療費控除は治療などにかかった費用の額が年間10万円を超える場合にその超える分、または総所得金額等の合計額×5%のいずれか低い金額を所得から控除するというものです。
本人の分の他、家族の分も合わせることができます。この場合、医療費を支払った人と支払ってもらった人との間で扶養関係があるかどうかは関係がありません。
控除の対象となる医療費には、医師又は歯科医師による診療又は治療を受けるために支払った費用や、医薬品の購入費、入院した際の部屋代や食事代、医療用器具の購入代や賃貸料などがありますがその他にも様々な支出が認められています。
生命保険会社などからの給付金や健康保険組合からの出産一時金、高額医療費など、医療費を補てんする給付がなされた場合には、医療費から差し引かなければなりません。
( 3) 年の途中で退職した後に就職せず年末調整を受けなかった人 |
会社を退職後、再就職をしなかった場合で、年末調整を受けていない人は確定申告をするとほとんどの場合に税金が戻ります。
退職するまで給料から天引きされていた税金はその人が1年間働くことを前提に概算で計算していますから中途退職した場合は、1年分の高い税率が適用され多く天引きされていることになります。したがって、確定申告をすれば多く納め過ぎた税金が還付されることになります。
退職所得と定率減税
また、退職金をもらった人は確定申告のとき定率減税についても注意してください。なぜな
ら、会社で定率減税の控除をしてくれるのは給与所得だけで、退職所得についての源泉徴収の
段階では定率減税の適用がないからです。年の途中で退職し再就職しないケースでは年間の給
与所得が低くなり、定率減税額も最高限度額の
25万円に達しないケースがあるからです。このような場合、確定申告することにより退職所得についても定率減税を受けることができます。
*定率減税 計算された所得税額の
20%を税額から控除できる制度。ただし、25万円を限度とする。
( 4)株式の配当金を受け取った人 ――――― 配当控除 |
配当所得は原則として総合課税により給与所得等と合算されて税金が課されます。この場合、内国法人から受けた配当金については、確定申告をすると次の表で計算された金額を差し引くことができます。これを配当控除といいます。
区 分 |
配当控除額 |
@ 配当所得を加えた後の課税総所得 金額が 1000万円以下の場合 |
配当所得の金額× 10% |
A 配当所得を加えた後の 課税総所得金額が 1000万円超 の場合 |
1000 万円以下の部分の配当所得の金額×10% |
1000 万円を超える部分の配当所得の金額×5% |
Aの場合を図示すると
配当所得控除額 = Aの部分× 10% + Bの部分×5% |
* 課税総所得900万円以下の人は申告が有利
配当所得は原則として総合課税で20%の所得税が天引きされています。課税総所得金額が900万円以下の場合、所得税の税率は20%のため配当控除を考慮すると、所得税の税率20%−配当控除10%=配当控除の実行税率10%となるので、申告をした方が有利になります(税金が還付される)。
逆に課税総所得金額が900万円を超える場合には所得税の税率が30%以上になるため、配当控除を考慮しても30%−10%(または5%)=配当所得の実行税率20%以上ですから、申告不要を選択した方が有利になります。
( 5) 住宅やゴルフ会員権を売却して損が出た人 ――――― 損益通算 |
マイホームなどを売却して損失が出た場合には、税金はもちろんかかりません。逆に確定申告することにより、その損失は給与所得から差し引かれ、給与から天引きされた税金が還付されることがあります。
* ただし、別荘などの趣味、娯楽、保養、または鑑賞の目的で所有する不動産などはその損失を他の所得
から差し引くことはできません。
バブルが崩壊してからゴルフ会員権の相場は値下がりを続けているのが現状ですが、ゴルフ会員権を購入価格より下回って売却した場合、その損失額は給与所得などから差し引くことができるため、確定申告すると税金が還付されます。
* ただし、ゴルフ場が倒産してゴルフ会員権がただの紙屑になった場合は、現行の税法上では何も救済措
置はありません。
( 6) 災害や盗難にあって被害を受けた人 ――――― 雑損控除 |
災害、盗難などにより、本人や家族の資産(日常生活に必要でない資産や事業用の資産
は対象外)の損害を受けた場合は、一定の金額を雑損控除として給与所得などの所得から
差し引くことができます。
雑損控除の金額 @ 損失額−総所得金額等の合計額×10%(いずれか多い方の金額) A損失額のうち災害関連支出の金額−5万円 |
(7) 国や公益法人などに寄付をした人 ――――― 寄付金控除 |
サラリーマンが国や地方公共団体、公益法人、政党などに一定の特定寄付金をした場合、次の金額を所得から差し引くことができます。これを寄付金控除といいます。控除できる金額は次のいずれか低い金額になります。なお学校の入学に関してする寄付金は対象になりません。
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寄付金控除は年末調整では控除できず、確定申告書に受領書などを添付または提示しな
ければなりません。
( 8) 年末調整でもれがあった人 |
年末調整で生命保険料などの申告を忘れたり、子供の国民年金を負担していたのに年末調整で申告していなかったり、年末調整後に子供の出産があったりした場合など年末調整で税金の精算ができなかったというようなときには確定申告をすることにより税金の還付を受けることができます。
還付の申告は 1月1日からOK |
通常の確定申告の提出は翌年の
2月16日から3月15日の間ですが、還付申告は2月16日以前でも(1月から)受け付けていますし、3月15日を過ぎてもペナルティはありません。(5年前までさかのぼって申告をすることができます。)早く還付申告すればそれだけ早く税金が戻ってきます。混雑する時期を避けてすいている早めの時期に申告しておきましょう。
(2001年
2月10日)