税務トピックス No.49   青色申告制度  

         

  1. 青色申告とは
  2.  申告納税制度のもとでは、納税者が帳簿や取引の記録に基づいて申告することが前提になります。そこで、納税者が一定の帳簿を備えて一般の記帳制度による記帳により水準の高い記帳を行い、これに基づいて自主的に正しい申告をしようとする人に対しては、税務上、各種の特典を与えて優遇しています。このような申告をする人のことを青色申告者と呼び、他の通常の申告をする人(白色申告者)と区別しています。青色申告者の提出する申告書は、白色申告者の申告書(白色)とは異なる青色の申告書です。

  3. 青色申告のできる人

  青色申告のできる人は、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う人のうち、青色申告書の提出について税務署長の承認を受けた人に限られます。

  青色申告をする人は年々多くなってきており、現在では商売をしている人の半数以上が青色申告をしています。


          出所)関東信越国税局

  1. 青色申告の承認申請
  2.  青色申告をしようとする人は所轄の税務署長に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。青色申告の申請期限は次のようになっていて、例えばすでに事業をしている人は青色申告しようとする年の315日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。           


  3. 青色申告の特典

青色申告をする人には数多くの特典が与えられていますが、主なものをまとめると次のようになります。

  青色申告控除特別控除

 青色申告をしている人は無条件で所得金額から「青色申告控除」として10万円を差し引くことができます。

 さらに、事業所得や不動産所得を生ずべき事業を営んでいる人で、これらの所得の金額に係る取引を正規の簿記の原則に従って記帳している人は、その記録に基づいて作成した貸借対照表を損益計算書とともに期限内提出の確定申告書に添付する場合には、これらの所得から「青色申告特別控除」として55万円を差し引くことができます。

 平成14年分までは、簡易の簿記の方法により記帳している人が所定の帳簿書類そのほかの書類に基づいて作成した貸借対照表を損益計算書とともに期限内提出の確定申告書に添付している場合には最高45万円を差し引くことができます。 これらの特典は白色申告にはない大きな特典です。

 青色事業専従者給与の必要経費算入

 事業主と生計を一にしている配偶者や15才以上の親族で、その事業にもっぱら従事している人に支払った給与は白色・青色問わず必要経費になります。ただし、白色申告の場合配偶者は最高86万円までしか控除が認められません。

 これに対し青色事業専従者の場合、給与の額が仕事の内容や従事の程度などに照らしてふさわしい額であれば、全額必要経費として認められます。

 白色申告と比べると必要経費として認められる金額に大きな差が生じ、事業主の税金が大きく軽減されます。青色申告の特典の中でも青色事業専従者給与はもっとも利用価値の高い特典といえます。

  この特典を受けようとする場合には、その年の315日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。

  

  貸倒引当金の設定

 売掛金などの債権について、@ 一部回収困難な金額のその回収不能見込み額に加えて、Aそれ以外の健全な債権でも、年末に集計した売掛金や貸付金の合計額の5.5%(金融業は3.3%)までの金額を必要経費にすることができます。

  

  純損失の繰越と繰り戻し

事業所得などに損失が発生したときは、翌年以降3年間繰り越して損失額を各年の所得金額から差し引くことができます。

また、前年も青色申告書を提出している人は、損失額を前年の所得から差し引いたところで所得税額を計算し直して、すでに納めている前年分の所得税の還付を受けることができます。

  たな卸資産の低価法の選択

 事業所得などの計算をする場合、売上原価の計算をしなければなりません。その中で重要なポイントとなるのが棚卸資産の評価です。原則では棚卸資産の評価は仕入れ価格などに基づく原価法によらなければなりません。ところが、青色申告者の場合は原価法に比べるとはるかに有利な低価法による評価が認められています。低価法とは、簡単にいえばその棚卸資産を原価法で評価した価額と年末の時価(仕入価格)を比較し、いずれか低い金額を評価額とできるものです。つまり、時価が原価法による評価額より低くなっている場合は時価で評価できるわけですから、それだけ在庫価額を抑えることができ、売上原価の計算が有利(多く計上できること)になります。

  減価償却の特例

青色申告者に限って認められる減価償却計算における特典に「特別償却」があります。減価償却費が所得税法の規定より多く計上できるという優遇措置を受けることができるのです。比較的利用できるのは「特定電子機器利用設備を取得した場合」でしょう。コンピュータシステムを購入した初年度に購入価額のうち一定の割合を一時に必要経費として計上できるというものです。

  1. 青色申告に必要な帳簿

 

 原則

仕訳帳、総勘定元帳などを備えて複式簿記の方法で記帳します。

 特例

ただし、次のものでもよいことになっています。 

 ・標準簡易帳簿         現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳の5

 ・収支日計式簡易帳簿    その日の入出金・掛売り・掛買いなどを1冊で記録

 ・現金式簡易帳簿       その日の入出金だけを1冊で記録。ただし、一定の小規模事業 

                   者以外は認められません。

  •  これらの帳場や決算関係書類は7年間、領収書などその他の書類は5年間、保存することが義務づけられています。

    6.青色申告で節税を

    このように青色申告者については、一定の要件を備えた帳簿を備えつけて記録し、書類を保存することによって所得税を計算する上で数多くの特典が受けられます。正しく記帳処理することにより、上手に節税を図りましょう。

                                                    (20013月)