前回の税務トピックスで住宅ローン控除の適用要件や控除金額の計算方法等を取上げましたが、今回はお客様からの質問の多かった事項を取上げてみました。
1.住宅金融公庫からの資金交付日(融資実行日)が住宅ローン契約締結日の翌年になる場合
2.住宅ローンを借換えた場合
3.借換えに伴う手数料等の上乗せについて
4.償還期間が10年間の意味
5.繰上返済した場合の取扱い
6.つなぎ融資の取扱い
7.連帯債務の住宅ローンを単独債務に借換えた場合
8.共有の住宅を連帯債務で取得した場合の借入金額の計算
9.預金担保による住宅ローン
1.住宅金融公庫からの資金交付日(融資実行日)が住宅ローン契約締結日の翌年になる場合
住宅金融公庫から借入をして住宅を取得します。平成10年12月に居住して12月中に金銭消費貸借契約を行いましたが、住宅金融公庫の事務の都合上、資金交付日(融資実行日)が翌年1月になりました。この場合、平成10年12月31日現在では借入金残高がないので、入居した平成10年分の住宅ローン控除は受けられないのでしょうか。
住宅金融公庫の貸付けは、12月上旬以降に契約されたものについての資金交付は翌年の1月上旬に行われるため、12月31日現在では確かに借入残高はないのですが、年内に入居(住宅ローン控除は入居した年以後6年間受けることができることになっています。)したが、たまたま、契約をした日と資金交付を受けた日が年をまたがったため5年分しか控除が受けられないということについては、納税者の理解が得難いことなどを理由に、契約をした年についても住宅ローン控除を認めることとして取扱われます。
住宅ローン控除を受けている途中で、低金利の住宅ローンに借換え、当初の住宅ローンを返済しました。新たな借入金は住宅ローン控除を受けることができるでしょうか。
次のいずれの条件も満たしているときに限り、新たな借入金は住宅ローン控除の対象になります。@ 住宅に入居して6年以内であること。A 当初の借入金を返済するものであることが明らかであること。B 新たな借入金が償還期間10年以上であるなど、住宅ローン控除の借入金の要件を満たしていること。 ただし、住宅ローン控除の適用を受けられるのは、借換えてから6年間ではなく、あくまでも入居してから6年間ということになります。
住宅ローンの借換えに際し、借換手数料、登記費用の分もあわせて借入れましたが、これらの金額を含めて住宅ローン控除の対象となる借入金としてよいでしょうか。
住宅ローン控除の対象となる年末残高は、借換手数料、登記費用込みの借換え後の実行額を住宅ローン控除の対象となる借入金として差し支えありませんが、借換え前の借入金の残高が限度となります。 借換え後の借入金額が借換え前の残高を超える場合には、次の算式により計算した金額が住宅ローン控除対象の借入金となります。
住宅ローン控除対象となる 新たな借入金 消滅した時点の旧借入金残高 借入金の年末残高 = の年末残高 × 借換えによる新たな借入金
次のような住宅ローンの契約をしました。
第1回返済日 平成10年9月25日
最終返済日 平成20年8月25日
第1回目の支払日から最終回の支払日までの期間が、9年11ヶ月となり、償還期間が10年に満たないことになり、住宅ローン控除が受けられないでしょうか。住宅ローン控除の対象となる借入金の要件として、「償還期間が10年以上の割賦償還方法により返済される借入金であること」が必要とされています。 この「償還期間」は借入金の債務を負っている期間をいうのではなくて、実際に返済する期間をいいます。また、この期間の計算は月を単位に計算することとされています。したがって、この場合、日を単位として計算すると確かに9年11ヶ月となりますが、月を単位として計算すると、10年になりますから、その借入金は住宅ローン控除の対象になります。
住宅ローンの一部を繰上返済しました。その結果当初借入時からの償還期間が8年と短くなったのですが、これまでと同様住宅ローン控除を受けることができるでしょうか。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、償還期間が10年以上でなくてはなりません。当初の契約により定められていた最初に返済した月から短くなった償還期間の最終の返済月までの期間が10年以上であれば、本年以後も住宅ローン控除を受けることができますが、10年未満となるときは、本年以後の住宅ローン控除は受けられません。したがって、償還期間が8年となった本件の場合、住宅ローン控除は本年以後受けられないことになります。
住宅金融公庫に借入れの申込みをしましたが、入居した平成10年中に金銭消費貸借契約が間に合わず、翌年になりました。10年中に融資基本契約書を公庫に差し入れ、公庫から中間金の融資500万円を受けていますが、このつなぎ融資は住宅ローン控除の対象になるでしょうか。
金銭消費貸借契約自体が平成10年中において未了であるため、住宅ローン控除は認められません。中間金の融資500万円は、契約が実行されるまでの「つなぎ融資」であり、一括返済されるものですから対象になりません。
住宅金融公庫からの融資に限らず契約が実行されるまでの一括返済される「つなぎ融資」は住宅ローン控除の対象にならないので注意が必要です。
なお、契約が10年中に行われていれば、資金交付日(融資実行日)が11年になっても住宅ローン控除の対象となる借入金として認められるのは前述の通りです。2年前に父と長男の連帯債務による借入金で住宅を取得し、父と長男それぞれ2分の1の持分でその住宅を登記しました。今年になって長男を債務者、父を連帯保証人とする借入を行い借換えをしました。今年以降の住宅ローン控除の計算はどうなるでしょう。
父は借入金残高がなくなるので借換えをした年以降は住宅ローン控除を受けられなくなります。 一方、長男は借入金が増加しましたが、当初の家屋の持分に相当する借入金の部分のみが住宅ローン控除の対象となるので、住宅ローン控除の額が増えることはありません。連帯債務の住宅ローン借換えには注意が必要です。
なお、連帯保証人の父が返済負担をしなくなると、父の借入金を長男が負担することになるため、住宅の登記持分を変更しないと贈与の問題が発生する可能性があります。夫婦の連帯債務で借入し、夫婦共有の住宅を取得した場合、各人の借入金はどのように計算するのでしょうか。
連帯債務の場合は、各債務者が債務の全額について返済する義務を負うこととされていますが、債務者相互間では、それぞれ一定の割合で義務を負担しあえばよいことになっています。各債務者の負担すべき部分は、特約(当事者間の内部契約)によって定められますが、それがない場合は原則として各債務者の受けた利益によって計算することになります。
例えば、次のように資金調達し、2500万円の住宅を取得した場合
家屋の購入代金 2500万円 (夫4:妻1の持分共有)
頭金 1000万円 (夫の自己資金)
借入金 1500万円 (夫婦の連帯債務)
夫は2,500万円×4/5−1000万円=1000万円
妻は2500万円×1/5=500万円以上の借入金がそれぞれの住宅ローン控除の対象となる借入金の金額となります。
預金担保による借入により住宅を取得したところ借入金利が3%未満になってしまいました。住宅ローン控除の対象となるでしょうか。
勤務先から利子補給を受けた結果実質負担金利が年3%未満のものや社内融資などで、年3%未満の借入金は住宅ローン控除の適用は受けられません。しかし、預金担保借入は銀行からの借入ですので、こうした金利による制限はなく、住宅ローン控除の対象になります。ただし、償還期間が10年以上の割賦償還方式による借入であることが必要です。